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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)4891号 判決

理由

一  勝村木工が本件譲受債権を有していたこと、その一部に対し、被告が原告ら主張のとおり本件執行をなしたことは当事者間に争いがない。

二(一)  《証拠》によると、原告らは、昭和四二年四月四日勝村木工から本件譲受債権を譲受け、勝村木工はその旨の債権譲渡通知書に公証人の翌五日付で確定日付を受けた上で訴外各信用金庫に送付したことが認められ、また、《証拠》によると、右債権譲渡通知書は訴外荒川信用金庫および同光信用金庫には同月六日、同滝野川信用金庫には同月六日、同滝野川信用金庫には同月七日にそれぞれ到達したことが認められ、この後段の事実については反証はない。

(二)  もつとも、原告三木工業株式会社が、いずれも勝村木工を債務者とし、(あ)訴外荒川信用金庫を第三債務者として当裁判所昭和四二年(ル)第一四五九号同(ヲ)第一六八八号をもつて、(い)訴外光信用金庫を第三債務者として同(ル)第一四六二号同(ヲ)第一六九一号をもつて、(う)訴外滝野川信用金庫を第三債務者として同(ル)第一四六一号同(ヲ)第一六九〇号をもつて、それぞれ債権差押および取立命令を申立て、同年四月五日その決定がなされたことおよび原告五味木材株式会社が本件執行に配当加入した事実は当事者間に争いがなく、そして、《証拠》によると右各執行申立は同月四日になされ、また、右執行は本件債権の一部又は全部を目的としていることが認められ、右認定に反する証拠はなく、右諸事実からすると前示(一)の事実は否定されるべきであるかのようである。

しかし、原告三木工業株式会社代表者の供述によると、原告三木工業株式会社から勝村木工に対する債権の保全手続一切を委任されていた橋本弁護士と同原告との連絡が不充分であつたため、たまたま前示債権差押申立と本件債権譲渡が同日になされるに至つたことが認められ、他に右認定に反する証拠はなく、また弁論の全趣旨からすると、原告五味木材株式会社の配当加入も、本件債権譲渡に先行する訴外協同組合荒川洋家具工業会および同依田正美の仮差押(同仮差押の事実は当事者間に争いがなくこれが解放されたことは成立の真正につき争いがない甲第九号証の一ないし四から明らかである)が本執行に移行した場合の対策としてなされた事実が認められ、これらの事実からすると、前段に記載のとおりの事実は前示(一)の認定に反するものではないと言わなければならない。そして、他に右(一)の事実の反証はない。

三  本件債権譲渡が通謀虚偽表示であるとの被告の主張を認めるに足る証拠は、本件審理には表われないから、右主張は理由がない。

四  被告は本件債権譲渡の債務者への譲渡通知到達は原告三木工業株式会社のなした前示債権差押および転付命令の第三債務者への到達後であるから、右差押および転付命令が債権譲渡に優先すると主張する。

しかしながら、債権差押後の右債権譲渡とても有効であり、ただそれ以前の差押債権者には対抗し得ないだけであると解すべきである。しかも、右譲渡後は譲渡された債権はそれまでに執行手続に加入しなかつた譲渡人の債権者の責任財産とはならず、したがつて右譲渡人の債権者は譲渡前の差押について配当加入することもできないものと解すべきである。けだし、それは、時期に遅れた配当要求債権者は、配当加入時の状態を承認して配当要求するものとして扱われてもやむを得ないと解され、また、民事訴訟法第六二〇条第三項からしてもそのように解されるからである。

そして、本件にあつては、勝村木工の原告らに対する本件債権譲渡後に本件執行がなされたことは前述のところから明らかである。してみると、本件債権譲渡が原告三木工業株式会社の債権差押の前であるときはもちろん被告主張のとおり後であつても、本件債権譲渡は被告に対しては有効であり、また別紙目録記載の債権は被告の勝村木工に対する債権の責任財産には属さないものと言わなければならない。よつて被告の前示主張は理由がない。

五  以上のとおり別紙目録記載の債権に対する本件執行は許されないものであるから、原告らの本訴請求は正当として認容

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